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2010年8月

2010年8月31日 (火)

稲刈り:余談2

田舎は子供も純朴だ。

伯父の家の前でブラブラしていると、同じ集落のよその家の中学生が、クラブの練習の帰りか何かなのだろう、ヘルメットをかぶって自転車に乗って通りかかる。

町なかの中学生なら、当然ながら、見向きもせずに通り過ぎるだろう。

田舎の子は違う。
ちゃんと挨拶をしてくれる。

彼らからすれば、ぼくは見たこともないおじさんのはずだ。
それでもちゃんと挨拶してくれる。

しかも、ただ挨拶するだけではない。

なんと彼らは、「こんにちは」ではなく、ぼくに向かって、

「ただいま」

と言うのだ。

知らないおっさんのはずなのに。
この家の前に立っているというだけで、彼らにとってぼくは身内と感じられているのだろう。

そこは当然、「おかえり」と言わねばならないところなのだけれども、恥ずかしながら、咄嗟にその言葉が出なかった。

うーむ。
まさに、強固な地域社会の中で、「集落の子」としてのアイデンティティを持って育っていなければ出ない一言。

隣の部屋のおじさんの職業も知らない、世知辛いマンション暮らしの自分には、衝撃的な一件でした。

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2010年8月30日 (月)

稲刈り:余談

うちの田舎には、方言の研究者が調査に来たりしてたくらい、古いボキャブラリーが残っている。
もうぼくくらいの世代の人たちはかなり標準化されてしまっているけれども、伯父伯母の年代だと、いまだに頻繁に聴き慣れない言葉を使う。
子供の頃から聞いているので、たいていは理解しているつもりだけれども、いまだに新しい発見をしたりすることもある。

今回の稲刈りで、田んぼの畦で一休みして伯母と話していたときにも、ひとつ新発見した。

同じ集落の中の、近所の娘さんの話。
よくできた娘で、この春に大学を卒業して1人で暮らしているのだけれども、父親がおらず母親だけが田舎にいるので、休みの日には帰ってきて家の世話をする。
女の子なのに、稲刈り機まで運転して、農作業も昔からよく手伝う。

その娘さんを指して、
「よう埒の明く子
だと言う。

埒が明かない、というのならよくわかる。
埒が明く、というのは聞いたことがない。
そもそも、そういう言葉が、田舎のおばあさんの、日常の話し言葉の中に出てくることにちょっとびっくりする。

家に帰って調べると、「埒」というのは、

かこい。しきり。特に馬場の周囲の柵。

だそうで、「埒が明く」は、

物事がはかどり決まりがつく。かたがつく。

とある。
用例は、現代語だと
「君と話しても埒が明かない」
と、やはり否定形のみ。
肯定形の用例は、日葡辞書から
「ラチノアイタ人」
というのが引用されている。(以上、うちの大辞林より)
ボルトガル人が日本にやってきた当時には、恐らく普通に使われていた表現なんだろう。

だから、「埒の明く子」は、用法としては、どうも合っているらしい。
よく間に合う子、といった意味であろうことは、文脈からも容易に想像できた。

こういう表現が失われていくのは実に惜しい。
これからぼくも使ってみようかと思う。

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稲刈り

先週末は土日つづけて田舎で稲刈り。

稲刈りは、うちのような規模であれば、基本的に男2人いれば成立する作業で、同時に大勢がいても大して仕事がない。
少人数で、何日かかけて、ぼちぼちやる。
だから、例年は駆り出されない年の方が多い。
が、今年は田舎の伯父が直前に体調を崩した。
もう回復はしているけれども、さすがにもう70代も後半なので、徐々に弱ってきているし、何より本人が弱気になっている。
急遽出動要請がきたので、仕事をキャンセルして、何年ぶりかの稲刈りをすることになった。

稲刈り機が新調されている。
田植機という機械の見事さにも惚れ惚れするが、稲刈り機もすごい。
これを考えた人にはノーベル賞あげたい。

こんな猛暑の中での稲刈りは初めてだ。
稲刈りは体中がチクチクしてくるので、長袖長ズボンで全身をガードするのだけれども、暑くて長袖が着ていられない。
でも、黄金色の田んぼと、その向こうには深い緑色の里山、その上に深い青の空と真っ白な入道雲。その真夏の強烈なコントラストの中で稲刈り機に乗って、のんびり稲を刈るのは、実に気持ちがいい。
いつも思うのだけれども、農作業は最高のストレス解消になると思う。
張りつめていた神経がぐにゃぐにゃに弛緩するような気分になる。
と言うか、気分がのんびりしてきて、それで初めて、自分がぴりぴりしていたことに気付く。
適度に身体を動かして、汗をしっかりかくのもいいのだろう。

特に稲刈りは、収穫の喜びが伴うから、余計いい。
刈り取った籾はすぐに乾燥機に入れて乾燥させるのだけれども、うちの乾燥機には、田んぼ3反分の籾しか入らない。
だから、1日の作業は、3反刈ったら終わり。
1日で3反はちょろい。
朝からお昼前まで働いて、昼休みは3時までごろごろする。
ビールも1本だけ飲む。
3時になったらぼちぼち再開して、日が暮れるまでにはじゅうぶん終わる。
夕方はまた涼しくて快適。

稲を刈り始めると、すぐにツバメがたくさん集まってくる。
稲の中に潜んでいた虫どもが、刈り取られた田んぼに続々と露出し始めるので、それを狙ってくるのだと思う。
カラスも集まる。
籾をついばんでいるように見える。
カエルやイナゴが跳ね回る。
どういうわけか、スズメはいない。
昔はたくさんいたように思うけれども。

稲刈り終わって、シャワー浴びてから飲むビールは、何よりも美味いです。

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