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2008年6月17日 (火)

キンクスとビートルズ

5/29のつづき。
キンクスがビートルズに比べてどのように地味なのか、いいサンプルを思いついた。
66年、両者がイギリスの税金の高さを皮肉った曲をそれぞれ発表している。
まずはビートルズの「Taxman」。ジョージの曲だ。

Let me tell you how it will be,
There's one for you, nineteen for me,
'Cos I'm the Taxman,
Yeah, I'm the Taxman.
Should five per cent appear too small,
Be thankful I don't take it all.
'Cos I'm the Taxman,
Yeah yeah, I'm the Taxman.

(If you drive a car car), I'll tax the street,
(If you try to sit sit), I'll tax your seat,
(If you get too cold cold), I'll tax the heat,
(If you take a walk walk), I'll tax your feet.
Taxman.

'Cos I'm the Taxman,
Yeah, I'm the Taxman.
Don't ask me what I want it for
(Ah Ah! Mister Wilson!)
If you don't want to pay some more
(Ah Ah! Mister Heath!),
'Cos I'm the Taxman,
Yeeeah, I'm the Taxman.

Now my advice for those who die, (Taxman!)
Declare the pennies on your eyes, (Taxman!)
'Cos I'm the Taxman,
Yeah, I'm the Taxman.
And you're working for no-one but me,

どういうことになるのか説明しよう
君の取り分が1とすると、私が19だ
だって私は税金取りなのだから
5%じゃ少なすぎると思えるのなら
全部持っていかれないだけでも感謝しろよ
だって私は税金取りなのだから

車に乗るのなら、道路に課税する
座りたいなら、イスに課税する
寒いのならば、暖房に課税する
歩くのならば、足に課税する

そう、私は税金取り
これ以上取られたくなければ
(おお、ミスター・ウィルソン!)
何のために使うかなんて聞くな
(おお、ミスター・ヒース!)
そう、私は税金取りなのだから

死にゆく人々にもアドバイスしておこう
目の上にのせられた小銭の申告もお忘れなく
私は税金取り
そう、税金取りなのだから
君たちは他ならぬ私のために働いているのだ

「Taxman」は、ビートルズにおけるジョージの代表曲の1つと言ってよい、よくできた曲だと思う。
曲調はストレートなロックンロールだけれども、詞はシニカルで気が利いている。
ジョンは言うまでもなく、ジョージもイギリス人らしい皮肉がたいへん上手い。
しかも、ここが重要なのだけれども、ビートルズは言葉が非常に簡潔で、シニックも直接的。実にわかりやすい。
これが若々しく力強いジョンのボーカルの天性の魅力と相まって、たいへんな訴求力を持つ。
勢いがあって、なおかつ気が利いている。
ポップソングとして非の打ち所がない。

ちなみに、ウィルソン、ヒースというのは当時のイギリス労働党と保守党の党首。税率95%というのは、冗談かと思ったらほんとだったらしい。(ウィキ参照

同じテーマをレイ・デイビスが歌うと次のようになる。
「Taxman」と同じ66年のアルバム『Face to Face』より、名曲「Sunny Afternoon」。

The tax man's taken all my dough,
And left me in my stately home,
Lazing on a sunny afternoon.
And I can't sail my yacht,
He's taken everything I've got,
All I've got's this sunny afternoon.
Save me, save me, save me from this squeeze.
I got a big fat mama trying to break me.
And I love to live so pleasantly,
Live this life of luxury,
Lazing on a sunny afternoon.
In the summertime

My girlfriend's run off with my car,
And gone back to her ma and pa,
Telling tales of drunkenness and cruelty.
Now I'm sitting here,
Sipping at my ice cold beer,
Lazing on a sunny afternoon.
Help me, help me, help me sail away,
Well give me two good reasons why I oughta stay.
'Cause I love to live so pleasantly,
Live this life of luxury,
Lazing on a sunny afternoon.
In the summertime

税金取りは金を残らず持って行ってしまった
この荘厳な家に1人残され
ぼくは晴れた午後をだらだらと過ごす
もはやヨット遊びもできない
ヤツが何もかも持ち去ってしまった
ぼくに残されたのは この晴れた午後のひとときだけ

この搾取からぼくを救ってくれ
イカサマ女がぼくを破滅させようとしている
ぼくは楽しく暮らすのが好きなんだ
ぜいたくに暮らしたいんだ
夏の日の晴れた午後をだらだら過ごしながら

ガールフレンドはぼくの車で
親のところへ逃げ帰った
どうせ酒や暴力の話を訴えているんだろう
ぼくはここに座って
冷えたビールをすすりながら
晴れた午後をだらだら過ごしている

助けてくれ ぼくを船で逃げさせてくれ
ここにとどまるべき理由を教えてくれ
だってぼくは楽しく暮らすのが好きなんだ
ぜいたくに暮らしたいんだ
夏の日の晴れた午後をだらだら過ごしながら

レイ・デイビスは、よほど貴族階級に恨みがあるらしい。
イギリスの税金の高さだけでなく、同時にアッパークラスをも皮肉る、ちょっとしたストーリー仕立てになっている。
そして、その分だけ手が込んでて、複雑で、結果的に地味になっている。
タイトルからして、ビートルズが「Taxman」とそんまんまであるのに対し、キンクスの「Sunny Afternoon」というのは、貴族階級の零落を暗喩する象徴表現となっている。
この辺がキンクスの「わかりにくさ」になっていると思うのだけれども、わかってしまえば、キンクスはこういうところこそがかわいいのだ。

「Sunny Afternoon」は、たいへんメロディのよい曲で、66年当時にこのような変な曲作りをしていたロックバンドはなかなか見あたらない。
前回にも書いたとおり、演奏と歌のまずさは、彼らの場合かえって味わい深さを増す。
数は少なくとも熱心なファンがいまだにいるのは、この何とも抗しがたい遠慮がちな魅力ゆえだと思うけれども、同時に、アメリカ人にウケないのも当たり前だわなとも思う。

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