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2008年6月 4日 (水)

磯﨑憲一郎『眼と太陽』を読む

磯﨑さんの文藝賞受賞第1作『眼と太陽』が「文藝」に掲載されたので、遅まきながらやっと入手して読了。
何故か近所の本屋には「文藝」だけ置いてなくて手間取った。

文藝賞受賞作の『肝心の子供』は、ブッダを材に取った偽史小説であったわけだけれども、今回は一転、時代モノではなくて、アメリカのミシガン州に赴任している日本人が主人公。
おそらくは磯﨑さん自身の体験も随所に反映されているであろうと思われます。

読み始めたときは、前作に比べてずいぶん作風を変えてきたなと思ったけれども、読み終えてみると、スルスルととらえどころのない奇妙な読後感はしっかりと前作に通底している。
2千年以上も前のインドを舞台にした3人称の歴史モノ(?)である1作目と、現代のアメリカを舞台に1人称で書かれたこの2作目は、結局は姉妹作と言ってよいくらいにどこかとてもよく似ている。
細部には「意味」らしきものがたくさん撒き散らしてあるのに、全体としてその「意味」を追いかけようとすると、場面が変わるごとに肩透かしを喰らって、「意味」はスルスルとこぼれ落ちていってしまう。
意匠を全く異にしながらも、この2作は基本的に同じ書き方で書かれた小説であるという印象を受けた。

別の言い方をすれば、この『眼と太陽』を読んで、磯﨑さんが1作目で意図していたことがようやく見えてきたような気がする。
磯﨑さんの小説のテーマは、この語り方にあるのであって、その素材は2千年前のブッダであろうが、現代の商社マンであろうが、特に問題ではないのではないか。

読み方、間違ってますかね?
磯﨑さん、次作も心待ちにしております。

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コメント

ありがとう。読み方、合ってますよ。でもまあ、難しい話はいいから、また飯でも食おうぜ。

投稿: 磯﨑憲一郎 | 2008年6月 7日 (土) 21時17分

これはこれは直々にありがとうございます(笑)。春の異動後、上京の機会がめっきりないんですが、またその節はよろしくお願いします。もう3作目も執筆中すか?

投稿: riki | 2008年6月 9日 (月) 00時01分

昨日「肝心の子供」をようやく手にしたところです。そしたら今日、芥川賞に「眼と太陽」がノミネートされたというニュース。おめでとうございます。

投稿: さんぽん | 2008年7月 3日 (木) 10時35分

そうなんです! ぼくも今日ニュースで見て盛り上がっておりました。ノミネート作もぜひご一読を。

投稿: riki | 2008年7月 3日 (木) 22時40分

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