今日の1枚 The Rose of England/Nick Lowe & His Cowboy Outfit
ちょっと気になることがあるのでニック・ロウの『Labour of Lust』を聴きたいのだけれども、あいにくアナログ盤でしか持っていないので、すぐに聴くことができない。
ネットでCDを調べてみたところ、どうもいまだに廃盤らしい。
て言うか、何でもかんでも再発になるこのご時世において、信じがたいことに、ニック・ロウの過去の作品はほぼ全滅状態で、20世紀の作品を聴こうと思ったら『Basher』というオールタイム・ベストを買う以外にない。
が、全くダメなのだ、こんなベスト盤だけでは。
もしかすると、本人の意向も関係あるんだろうか。
ニック・ロウは、その昔、映画「ボディガード」のサントラに、「Peace, Love & Understanding」のカバーが収録されたおかげで巨額の印税収入を得たとのことだけれども、考えてみれば、その頃から活動が隠居ジジイみたいな感じになった気がする。
もう昔の作品などどうでもいいのだろうか。
白人による、いわゆる狭義のロックンロールというジャンルにおいて、ニック・ロウの業績は唯一で孤高である。
この単純な音楽形式を深く理解しつつ、白人ならではのサムシングを付加したスタイルは、簡単なようで決して真似できない。
その技術がピークに達したのは、ずばり『Nick Lowe and his cowboy outfit ('84)』と『The Rose of England ('85)』の2枚。
これ以降は徐々に、円熟しすぎと言うか、渋すぎる方向へ進む。
熟度とポピュラリティのバランスが最良なのがこの2枚だと思う。
個人的にもリアルタイムで聴いたので、余計に思い入れが深い。
幸いこの2枚だけはCDでも持っているのだけれども、今はアマゾンのマーケットプレイスでどちらも1万円以上の値がついている。
ひどい話だ。
この2枚、曲もいいけれども、演奏もいい。
全員が、「ロックンロール」の何たるかを熟知している。
ポール・キャラックが参加して、非常にいい仕事をしている。
また、何者かわからないんだけれども、Bobby Irwin というドラマーがまた非常にいい。
たぶんこの種の音楽しか叩けないタイプだと思うけれども、この種の音楽には正に最適のドラマーだと思う。
このバンド以外でのキャリアはネットを検索してもわからないが、もしかすると、同時期のトレイシー・ウルマンの楽曲のいくつかはこいつが叩いているんではないかとふんでいる。
クレジットはないんだけれども、スティッフつながりだし、何曲かよく似た印象のドラムがある。
そういうわけで、久しぶりに聴いたら、やっぱりよくて泣けてきました、『The Rose of England』。
ヒューイ・ルイス参加の大ヒット曲「I Knew the Bride」もこのアルバム収録です。
現状、入手不能ですが……。
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コメント
うん、ニックロウはいいよね。ロックンロール大好き。
俺もTHE ROSE OF ENGLAND だけはCDで持ってる。
1万円以上とは、ほんとひどいけど、評価が高いということの裏返しなのかな?
このCDはもちろん、ipodに収録。
アホな奴らを笑い飛ばして、結構、元気になれる。
投稿: torrissey | 2007年11月12日 (月) 02時06分
ほんとは熱いんだけど飄々としてるっちゅうか、「とぼけてる顔で実は知っている(@奥田民生)」みたいなとこがいいよなあ。
ポール・マッカートニーとか、トット・テイラーとか、イギリスのポップ職人系はみんな顔もなんとなく似てるのよね。
投稿: riki | 2007年11月14日 (水) 23時00分