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2007年11月28日 (水)

今日の1枚 『ベスト・オブ・憂歌団・ライブ』

今までライブでいちばんたくさん観ているバンドは、おそらく憂歌団だと思う。
初めて観たのが1986年頃で、それ以降は、観るチャンスがあるときは必ず観た。
もしも今はもう観ることができないバンドをもう1回だけ観せてやると言われたら、迷わず憂歌団を選ぶ。

憂歌団のライブ盤は、3枚ある。76年の『生聞59分』、85年の『Best of Ukadan Live』、 89年の『UKADAN LIVE ‘89』。(あと、限定版で81年の久保講堂のライブも出ていたけれども、これは聴いていない)

どれもいいんだけれども、自分がライブに通っていた時期に近いせいもあってか、個人的には『Best of Ukadan Live』がダントツによい。
客が沸く度に、木村の表情が、勘太郎のパフォーマンスが、逐一目に浮かぶ。
「ここで木村の声が聞こえなくなるのは椅子から立ち上がってオフマイクになってるからだ」とか、「勘太郎はここで右手を振り上げてピックを投げてるはずだ」とか、いちいち思い出す。

『生聞』は、憂歌団のあのスタイルこそ既に完成しているものの、やはりまだ若い。
『‘89』になると、もう巧すぎるっちゅうか、まあ巧いのはいいんだけども、ちょっと雰囲気が違ってて、あの独特のゆったり感がうまく録れていない。それに、このアルバムは半分がエレキのセットだ。やっぱりエレキセットは楽しくない。
驚くべきことに憂歌団の主要なレパートリーは、『生聞』から『‘89』までの13年間でも大して変わっていないのだけれども、それだけに、その13年の間に、芸としての完成度はすさまじいレベルに達している。
憂歌団は、この間ずっと年間100本以上のライブを延々続けていたのだ。

憂歌団と言うと、どうしても木村のボーカルと内田勘太郎のギターにばかり注目が集まるけれども、他のメンバーのプレイも見逃してはいけない。
例えば島田のドラムは、地味だけれども、他の3人、とりわけフロント2人があのようにフリーキーであるだけに、あの几帳面で沈着冷静なドラミングは、憂歌団にとっては非常に重要である。
逆に言うと、島田のドラムがあれだけ几帳面でかっちりしているからこそ、フロント2人がフリーキーに行きまくってもOKなのだ。
島田さんは、グラサンに角刈り、アロハ着用と、ぱっと見はそこいらのチンピラのようだけども、ファンなら誰もが知るとおり、グラサンはずせば優しい目つきで温厚そのもの、典型的なA型タイプで、ドラミング同様にたいへん几帳面な人である(ほんとにA型かどうかは知りません)。
憂歌団は、その実力に人気が伴っていないと常に言われ続けた、欲のないバンドであったけれども、島田さんはその中でも特に「欲のない人」であった。
毎朝家の周りの道路を、レレレのおじさんみたいに掃除しているような人である。
暴走する木村を、菩薩のような寛容性で後ろから見守る島田のプレイは、憂歌団の本質の25%を確実に担っている。

花岡のベースも、ほとんど話題にされないが、非常に技巧的だ。
フェンダーのプレシジョンはフレッテッドだけれども、張っているのはフラット弦で、ヤマハのアンプを使っているというのもプロでは珍しいと思った。
しかし、その構成が実に渋いサウンドを生み出す。
フレージングも、そのへんのブルースのプレイヤーに比べると遙かに多彩で、ジャズをはじめ他ジャンルの音楽を巧みに消化している。
タイム的には、たぶんもともと、ぐいぐい前へ行こうとするタイプだと思うのだけれども、テンポの速い曲なんかだと、恐らくは更に意図的に前のめりに攻める。
島田のドラムが安定しているから、花岡はかなり自由にぐいぐい行けるのである。
いつも足を組んで座って余裕ありげに弾いているが、出てくる音は実にスウィンギー。
『‘89』の「おそうじオバチャン」におけるプレイを聴いてみてほしい。
勘太郎のギターソロの裏でフリーキーにぶいぶい歌いまくるラインは強烈で、『生聞』の同曲と比べると、「13年でこうなったか」と感慨深いものがある。

木村の歌と勘太郎のギターが国宝級に貴重なのはもはや言わずもがなであって、今日は敢えて書きません。
その代わりに、通常あまり語られることのない木村のギターについて少々。
実際のライブでは、ほとんどフロントに音が出ていないことも多く、木村のサイドギターは、あってもなくてもいいようにすら思える(た)。
しかし、CDで聴くとよくわかるのだけれども、リズムギタリストとしての木村は、実に優秀である。
特に4ビートのカッティングが上手で、ひきずるような独特のタイム感がたいへん心地よい。
こういう粘っこいリズムを出すギタリストは、日本人には少ない。
勘太郎が木村のギターをほめているのを何かの雑誌で読んだことがあるけれども、勘太郎にしても、木村のリズムは乗っかりやすいんだろうと思う。
『Best of Ukadan Live』では、右チャンネルの木村のギターにも注目してください。

憂歌団は、解散じゃなくて、「活動休止」だったと思うのだけれども、雰囲気的に「再開」はまずないと思う。
誰か何とかメンバーの仲介してくれないだろうか。

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コメント

そういや、昔一回一緒に憂歌団ライブにいったよなあ。
面白かったなあ。
ビール飲みながら、ちゃちゃいれながら。。。
確かに、もう一回、見たい。

投稿: torrissey | 2007年11月29日 (木) 20時15分

行ったよねえ。あの頃が絶頂期だったと思うわ。

投稿: riki | 2007年11月29日 (木) 20時40分

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