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2007年9月15日 (土)

いましろたかし『デメキング』を読む

いましろたかし未完の怪作「デメキング」が、2頁書き足されて「完結版」となって復刻。
最初に単行本化されたときのKKベストセラーズ版には、ヤフオクやアマゾンの中古市場でも1万円以上の値が付いていて、さすがに手が出なかったので、遅れてきたいましろマニアにとってはありがたいことよと早速購入。一気に読了。

なるほど、これがいましろたかしの最高傑作とは全く思わないけれども、決して期待を裏切らない佳作だと思う。

巻末にいましろたかし本人へのロングインタビューが掲載されていて、それがめちゃくちゃ面白い。

「デメキング」は、連載しているうちに完全に収拾がつかなくなってきて、編集部にもダメ出しされて、人気もなくって、結局打ちきりになった作品らしいのだけれども、本人にとっても全くの失敗作だったという認識らしく、いかにこの作品がダメであったかを、うだうだうだうだと延々語っている。
本人的には、売れない、金がない、だからストーリーマンガで一発当ててやろうというような意気込みを持って臨んだ意欲作だったらしいことがわかる。
そして、やっぱりそれができなかった、売れなかった、オレはダメだ、というようなことを愚痴っている(笑)。

いちファンの立場から言わせてもらうと、このマンガの魅力は、いましろたかし本人の意図とは全く別のところにあるのであって、誰もいましろマンガにドキドキハラハラのストーリー展開を期待しているわけではない(と思う)。
この不可解で不条理な作品世界だけで十分にチャーミングなのだ。
結局、少なくともこの作品に関しては、いましろたかし本人は、自身の才能をまるで把握しておらず、ダメだ、イヤだ、売れない、金がない、一部のマニアにほめてもらってもしょうがない……、などと愚痴をばかりぼしている。
そのうだうだした煮え切らない物言いが、あまりにもいましろたかしらしくて面白い。
本人は大変なんだろうけど。

読み始めてすぐに思ったのは、この「デメキング」と、浦沢直樹の大ヒット作「20世紀少年」との類似性だ。
結果的には180度違うベクトルのマンガになっているけれども、ストーリーの設定には相通じるものがある。

その当の浦沢直樹が、巻末に2頁ほどの解説を書いている。
いましろと浦沢は同い年らしい。
そして、その同い年の2人が「かたや高知に生まれると『デメキング』、東京に生まれると『20世紀少年』」を描いたというのがおもしろい、と、偶然の一致に感嘆している。
が、個人的にはこれは怪しいのではないかと思う。
全くの邪推だから、勝手気ままなこういうブログでなければ書けないけれども、やっぱり浦沢直樹はこの『デメキング』を元ネタにして『20世紀少年』を発想したのではないかという気がする。

言うまでもなく、ぼくはこの2作品なら、圧倒的に『デメキング』を支持する。
もちろん、いましろ本人にとっては、「……いくら作品を褒められたって、8年たって単行本になって6千部とかって世界ですよ。まあ、名誉はあるのかもしれないけど、それで俺がいくらの金をもらうわけ、とかさ。やっぱり生活が成り立たないですよ。……」ってことなのかもしれないけれど(笑)。

いましろたかし本人にしてみれば、まさにこの浦沢直樹のようなタイプのマンガ家に対して巨大なコンプレックスを感じているのであって、その浦沢がいましろファンを名乗って解説まで書いているのは実に皮肉な構造だ。
しかし、逆に、浦沢の方は浦沢の方で、(おそらく)いましろたかしに対して引け目のようなものを感じているに違いない。

世の中、得てしてそんなもんだよな。

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