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2007年8月12日 (日)

世論、読本、地震

「世論」は、「よろん」と読むのであって、「せろん」ではない。
昔、そのように教わったので、「せろん」は間違いであるとずっと思っていたのだけれども、最近は「せろん」の方が多数派になってきたようで、テレビなんかでも「せろん」って言ってる奴がいるのが何となく気にくわない。
辞書で調べた限りでは、世論はもともと「輿論」であって、紛れもなく「よろん」なのだけれども、戦後の漢字制限で「世論」という表記が用いられるようになり、以後「よろん」と「せろん」があいまいになった、ということのように思われる。
してみると、「世論」が、「輿論」という語の表記方法だけを代替したものであると解釈するならば「せろん」は間違いだが、「輿」という漢字が使えなくなった際に、「世論」が「輿論」という語そのものを代替する別の語として発明されたというのならば、「せろん」という読みも必ずしも間違いとは言い切れなくなる。
そう言われれば、「世」を「セ」と読むのは音読みだが、「よ」と読めば訓読みになる。
「論(ロン)」は音読みだから、そういう意味では「セロン」が自然であって、「よロン」というのはいわゆる湯桶読みだ。
それでもやっぱり「せろん」が気にくわないのはおさまらない。

「文章読本」は「ぶんしょうとくほん」であって、「ぶんしょうどくほん」ではない。
しかし、身の回りの人々がみな口を揃えて「どくほん」と言うので(国語教師さえもが)、心配になって辞書で確認したことがある。
そしたらやっぱりこれはどうしたって「とくほん」であって、「どくほん」でも構わないという法はない。
にもかかわらず、これまで、「ぶんしょうとくほん」と正しく読む人に接することの方が逆にまれなくらいなのはどういうことか。
たまたまでしょうか。

いや、他人の誤読を責めることができるほど自分がしっかりしているわけでは決してないですよ。
実際、二十歳を過ぎるまで、「相殺」は「そうさつ」、「御用達」は「ごようたつ」だと思ってたし。
自分の間違いは気がつかないけれども、他人の間違いは気になるだけです。もちろん。

あと、ちょっと話は違うけれども、地震を平仮名では「じしん」と書くのが、昔から納得いかない。
「地」の読みは「ち」であって、それに濁点がついたら「ぢ」じゃないの?
「ぢしん」ぢゃないの?

本来、「じ」と「ぢ」は、音も違う。
しかし、日本人は、「じ」と「ぢ」の音の違いを、意識の上では区別していない。
音声学上のややこしい話は省略するけれども、「地震」と発語するときの「地」の音と、「大地震」と発語するときの「地」の音は、違っている。(敢えて言うなら前者が「ぢ」で、後者が「じ」)
その発音の違いによって「ぢ」と「じ」を区別するような仕組みに日本語はなっていないのだから、「ぢ」なのか「じ」なのかという問題は、「ち」に濁点なのか「し」に濁点なのかという方面からしか合理的な整理ができない。
「鼻血」は鼻から出る血(ち)だから「はなぢ」だし、「身近」は自身に近(ちか)いことだから「みぢか」である。
「お茶漬け」はお茶に漬(つ)けるから「おちゃづけ」だし、「片付け」は片を付(つ)けるから「かたづけ」だ。
なのに、「地震」は何故「じしん」なのか。

そう思って、今、念のためオンラインの漢和辞書で「地」を引いてみたら、音読みとして「チ・ジ」となっている!
あ、そうか、「ジ」はもしかして「チ」に濁点がついたわけではなくて、もともと「チ」と「ジ」の2種類の音読みがある、と……そういうことか!
そう言われれば、「はなぢ」は「はな+ち」の音便だし、「みぢか」も「み+ちか」の音便だけれども、「じしん」はそうじゃないもんな……。

すいません、これはこれにて解決、か。
やっぱり文章に書いて整理してみるっちゅうのは大事だな(笑)。
失礼しました。

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コメント

つい最近まで「うなづく」「ひざまづく」だと思ってました。「うな・づく」「ひざま・づくだと…。漢字にしたときの送り仮名が「く」ってことに着目すれば正解に近づけたのかなぁ。
(ハンドルネーム忘れたので新しい名前です。久しぶりに書き込んだ者です)

投稿: さんぽん | 2007年8月15日 (水) 01時44分

誰? 「3」か? いや、違うよな……。あ、もしかして、ほんとは「訓読み」の人?
ともあれ、「うなずく」「ひざまずく」に関しては、長くなりそうなのでまた本編で書きまーす。

投稿: riki | 2007年8月16日 (木) 00時06分

訓読みの人です。うなずきトリオが宇奈月温泉でうなずきマーチ歌ってたこと思い出しました。どうでもいい話でした。

投稿: さんぽん | 2007年8月18日 (土) 00時41分

ごぶさたしています。解決して、よかったですね。ところで、地面も、ぢめん、ではないのが気になっていましたか?それとも地震だけ?「地べた」は、じべた、より、ぢべた、のほうが雰囲気が出ている気がしますね。でも、ぢべた、ではパソコンで変換できませんでした。くだらない反応ですみません。

投稿: mari | 2007年8月18日 (土) 23時57分

→さんぽんさん あれは「うなずきトリオ」で「うなづきトリオ」ではなかったんでしょうか、やはり。でも、宇奈月温泉こそは、絶対に「うなづきおんせん」であるべきだと思います。
→mariさん ごぶさたです。まだ海の外ですか? 地震のみならず、地面も、地べたも、全部気になってました。でも、「雨降って地固まる」とかの用例になると、微妙になってきます。ATOKでは、「うなづく」も「うなずく」に修正されてしまいますが、これはやはり気に入りません。その後、ネットでつらつらと調べていたら、色んなことがわかってきたので、また本編でまとめてみます。

投稿: riki | 2007年8月19日 (日) 00時24分

なんだか「うなずきトリオ」だと視覚的違和感あるなーと思ってたんだけど、やっぱりそうなの? グーグルで調べたら「うなずきトリオ」だと711件、「づ」の方は1460件で、「づ」に軍配。「うなづきトリオ」の記憶が「うなづく」「ひざまづく」と私に間違い(?)を刷り込んだのかも。

投稿: さんぽん | 2007年8月20日 (月) 00時50分

お暑うございます。

すこしずつ、などとというときの「ずつ」というのもありますなあ。ごく最近まで「づつ」だと思い込んでいた。

あてずっぽうでいうと、戦後、新仮名遣いに切り替えたときにややこしくなったのかな。

投稿: ushiro | 2007年8月20日 (月) 02時21分

俺も「地震」を平仮名に変換した時に「じ」か「ぢ」かわかりませんでした。
でもあなたが調べて解釈してくださったので、俺も長年の問題を解決することが出来ました!!!
ありがとうございましたー♪

投稿: 江崎 | 2007年9月22日 (土) 22時39分

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